2012年11月2日金曜日

わらじで走るということ。

 わらじで本格的に走りはじめて、1年半ぐらい(レースで試してからは2年になる)になりますが、ここで一旦、わらじでの走り方について書こうと思います。わらじで走っていてよく聞かれる言葉に「足の裏は痛くないの?」というのがありますが、いつも答えは同じで「痛くないです。」と答えています。おそらくほとんどの人はそんなわけないだろうという顔をされるので、今回は痛くない理由についてもまとめてみます。
わらじを履いたばかりのころは足の指先が痛くて思うように走れません。おそらく3キロも走れないのではないかと思います。理由は足の裏の皮が薄いのと足の指の力が弱っているからです。これは靴を履いていることと関係しているということはすぐに分かると思います。靴を履いているということはソールが厚いため、足場の悪いところでも怪我をしないで歩くことができますがそれと同時に地面からの衝撃がない分、足の裏の感覚もつかむことができません。わらじを履いて最初に気づくことはこの地面から足の裏へ感じる感覚が、新しい目がついたかのように脳内に莫大な情報をもたらすということです。足の裏で状況を感じとる能力とでも呼びましょうか。具体的に言いますと痛くない道を考えなくても身体が勝手に選択することで怪我する確率を減らします。足裏からの絶え間なく来る痛みと視覚でみた状況を何度も経験しているうちに以前までは意識的に石を避けたりして安全な道を探していたのが、視界に別のレイヤーがかかったかのように走る道が見えてきて足を痛めない道を無意識に選択できるようになります。さらにわらじで走ってからすぐに靴に履き替えると別のことに気がつきます。足の指に力が入る。自分がいかに今まで靴を履いているときに足の指を使っていなかったのかということがわかります。これは、靴を履いて歩くときの基本動作と関係があります。正しい歩き方でよく言われるのが、かかとから着地して、足の外側から内側にかけて足裏をつけるというものがありますが、動作としては正しい動きだと思います。(靴を履いている限りにおいてはという条件はつきます。)ただ残念ながらかかとから着地(ヒールストライク)での歩行を続けていると重心が後ろに下がります。後ろというのは後ろにのけぞるような位置にくるという意味です。これによって浮き足という(足の指が浮いた状態)症状が起こります。わらじで走るとヒールストライクで走ることが出来ません。理由はかかとが痛いからです。そのかわり、拇指球(ぼしきゅう…足の親指の付け根)に力を入れて、フォアフット(足の前半分)で走れるようになります。俗に言うテケテケ走りです。少し前に重心を置いて、足を小刻みに動かすことになります。足の裏の皮は靴下で守られているので皮が薄くなっていますが、わらじを履き続ければ、そのうち強くなります。最初は皮がめくれても痛いですが、だんだん皮がめくれても下に新たな皮があるようになって怪我からの回復力が上がります。おそらく、足の裏は本来、傷つきやすいところですので元々回復しやすい機構になっていたのが、正常に働き出したということだと思います。
わらじを履いてから半年ぐらいずっと分からなかったことが、山の下りでは足が痛いということでした。その半年の間にわらじで100キロのウルトラを2回完走していましたが、それでもどうして痛いのか分かりませんでした。たいていの人はこのあたりで故障するからやめようと思うのだと思います。ルナサンダルやファイブフィンガーなど使用していてやめてしまうのは足が痛い原因が分からないからだと思います。私が足が痛くても走るのをやめなかった理由は昔の人はこれでどうやって山を下りたのだろうかということが頭にあったからです。ルナサンダルやファイブフィンガーだったら私もやめていると思います。昔できている人がいたのに自分が出来ないのは何か原因があるはずだ。昔の人にできて、同じような骨格を持った自分ができないわけがないと自分に言い聞かせていました。そんな思いがあったのでわらじで走り始めてからずっと昔の文献、書籍をしらべていました。ジャンルは、山伏、忍者、歩行術、旅行、武道、舞踊、アイヌ、マタギ、サンカ、民俗学者の書籍等です。この内容についてはまた別の機会にまとめたいと思います。話を戻しますが、わらじで山を痛みなく下る方法は、足の指から着地し、着地と同時か0コンマ何秒差でかかとを着地させます。わかりやすく言いますとこれは柔道の受け身と同じ原理です。柔道を受け身をとるとき、体に地面をたたきつけると同時ぐらいに地面に腕をたたきつけることで衝撃を和らげることができます。これを足の前半分と後半分で行います。足のかかとで受身を取りながら走るので痛みはなくなります。このとき足の指の力がついてないと足の指を痛めてしまいます。半年ぐらい履いていないと難しいと思います。足の指から着地するとふくらはぎにテンション(緊張)がかかり、ふくらはぎを痛めてしまうのではないかと思いますが、慣れないうちは最初は痛めます。ただこれも気づいたのですが、痛めない角度があるのでその角度がわかれば、痛めることは減ります。痛めない角度をもう少し説明しますと野球のキャッチャーや相撲取りを考えて頂ければ、足の指だけで支えて座っていますが、ふくらはぎを痛めたりすることはありません。足指で着地する際、真上から着地したら、ふくらはぎが痛いと思いますが、斜め前方から入ってきた角度であれば、ふくらはぎにかかる負荷は軽減されます。足場の悪い山道で着地の角度を常に一定にするのは至難の技ですが、慣れればこの角度で入ったら痛めないということが感覚でつかむことができます。これを靴を履いてすることはおそらく難しいと思います。足の裏の細かな使い方が構造上できないためです。この使い方ができると走りがまるで変わります。今まで恐る恐る足を出して下ろしていたのが、忍者のようにしゅんしゅんと飛び跳ねるような動きが可能になります。私がこれができるようになったのは2回目のわらじでのウルトラを完走して山の下りの研究をしていたときでした。いろんな走り方を試していましたが、あるとき突然、この走りができるようになりました。今までこれができなかったのは足の指の力で体を支えることができなかったことと足の裏の細かな感覚、受身をとる微妙なタイミングをつかめなかったからだと思います。たまたまある日その条件がすべて揃って動きとなってあらわれたのだと思います。
わらじを履いてからずっと考えていたことが他にもありました。それはわらじと靴とはどう違うのかということです。わらじはとても走りやすく、山登りが楽だという感覚がありましたが、ぼやっとしていて明確に違いを説明できないでいました。1年ぐらいしてダイアモンドトレイルのレースのときにはっきりと分かりました。わらじと靴との明確な違いは3つあります。まず一つ目に素材となる藁です。藁というのは触ったり、編んだりしたりするとよくわかりますが、表面がザラザラで摩擦が大きく、わらじを編んだりすると指先の指紋がなくなるぐらい抵抗が大きいです。特に水を含むとその摩擦は大きくなり、素足でわらじを履くと皮膚が負けてしまい靴擦れのような状態がいたるところにできます。その大きな摩擦が山の登りの際に強力なグリップ力となって足に地面が吸い付いたように登れます。二つ目に登りの際に足の筋力を使わないで登ることが可能になります。どういうことかと言いますと足の指先にアイゼンがあるような感じで地面をひっかけて登ることができます。通常、靴では登りの場合も足裏全体がつくのでできないと思います。わらじは地面とわらじと足袋の間をわらじの強力な摩擦で一つのもののように一体となることができるので、足先を着地と同時に地面をひっかけて、摩擦の働きですべらず、ひっかかった指先が基点となっててこの原理が働いて、身体がクイっと前に押し出されて足の筋力を使わないで登ることができます。わらじを履いてないとイメージが湧きにくいと思いますが、靴だと靴と地面の間、靴と靴下の間で少しずつすべるので足の力を使わないと踏ん張れず、また筋力を使ってバランスをとっているので、てこの原理がうまく使えません。これを一番よく使うのが階段のような急な道を登るときに違いがよくわかります。(急な斜面を歩かず走ることが前提です。)三つ目が、足の指をパーではなく、グーで着地ができるということです。よく言われますが、足を痛める原因の一つが足のアーチが崩れていたり、片方の足首が内側に傾いていたり、外側に傾いていたりということがありますが、それを補正するためにインソールを入れて傾きを戻すこと。アーチを戻すことで足を痛めるのを軽減する対処方法があります。しかし、私にはそれが全く機能せず、私には左足が内側に傾いている症状があり、靴を履いているときはインソールを入れて走っていましたが100キロマラソンでも必ず右足を痛めていました。当然、わらじを履いていても最初の1年ぐらい同じように右足を痛めていたのですが、あるとき左足と右足の指の使い方が着地の際に違うことに気がつきました。痛めていない左足の指は指を丸めてグーのような形で着地しているのに対して右足の指は完全に開ききったパーのような着地をしていました。右足のパーをグーのような形で着地したところ、足の痛みがなくなりました。その後、いろいろ試しましたが、着地は開ききったパーではなく、グーで着地した方が地面からのより大きな負荷に耐えられるのではないか。グーの形になることで擬似的にアーチが形成されて、耐えられるのではないかと考えています。(あくまでも私見です。現在も検証中です。)
以上のようなことはおそらく昔の人はあたりまえにできたことなのでしょう。だから、普通の人が10里、20里(1里約4キロ)の距離を簡単に歩くことができたのだと思います。まだ他にも痛くない理由はあるのですが、今回はここまでにしておきます。

0 件のコメント:

2018 UTMF

 レース前日に新富士駅まで新幹線で向かい、富士駅前のスーパーホテルで前泊した。新大阪駅あたりで頭にかぶる笠を忘れてしまったことに静岡駅でひかりからこだまに乗り換えるときに気づいた。新しく買い替えたばかりの笠だったので、ちょっとショックだった。  ホテルに着いたら、今回からの背負...